Wet系バイオインフォマティシャンの災難

機械に弱いバイオ研究者に降りかかる災難を綴っていきます。 Twitter: @1wantphd

【学振特別研究員になるために】申請書の書き方以外に大切なこと

学振特別研究員の申請の時期になりました。

これから学振に申請する皆様へ私がどうしても伝えたいことは

申請書の書き方”以外”に大切なことがある

ということです。

私はこれを知らなかったため、1年目のDC2申請の際には不採用をいただくことになりました。

しかし、この教訓をもとに再チャレンジした2年目のDC2申請では

申請書の内容は1年目とほぼ変わらなかったにもかかわらず採用をもらえました!

 

なお、この記事では申請書の書き方については記載していませんので、

それについてはみのんさんのブログや書籍などをご参照ください。

https://ocoshite.me/how-to-get-gakushin-dc1

学振申請書の書き方とコツ DC/PD獲得を目指す若者へ (KS科学一般書)

 https://www.amazon.co.jp/dp/4061531603

 

DC2採用までの経緯

まず、DC2の大前提として

主著1報の業績があることは圧倒的なアドバンテージになる

ということです。

過去の採用者一覧から採用者の業績を調べてみると

一般的な生物系の審査区分では

主著0-1報、共著2-5報

くらいがだいたいの目安です。

しかし、論文の出しやすさは研究分野によって変わります。

審査区分次第では主著3報で平均レベル

というようなハイレベルの分野もあります。

1年目の私は何も知らずにそのような研究分野に申請をしてしまったのが敗因でした。

そこで、2年目の申請では申請書の内容はほぼ変えず、

申請すべき審査区分を徹底的に考え抜いた結果、DC2に採用されるに至りました。

 

審査区分ってなんですか。

審査区分とは、”適切な相対評価”ができるように

申請者の研究内容を分類するための区分で、

以下の3つから成り立っています。

  1. 書面合議・面接審査区分(=大区分)

  2. 書面審査区分(=中区分)

  3. 小区分(=小区分)

書面合議・面接審査区分とは「生物系科学」や「医歯薬学」というような大きな区分になります。

書面審査区分とは上記の区分をさらに細分化した区分であり、

例えば、生物系科学なら以下の4つの書面審査区分があります。 

  1. 分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野

  2. 細胞レベルから個体レベルの生物学およびその関連分野

  3. 個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野

  4. 神経科学およびその関連分野 

そして、各書面審査区分はさらに小区分に分かれます。

「1. 分子レベルから細胞レベルの生物学およびその関連分野」なら

分子生物学関連

構造生物化学関連

機能生物化学関連

生物物理学関連

ゲノム生物学関連

システムゲノム科学関連

 

ここで重要な点として覚えておいてほしいことは

申請書の審査は書面審査区分(=中区分)ごとに行われる

ということです。

小区分の具体的な内容例などについては

日本学術振興会が公開している審査区分表に記載されているので参考にしてみてください。

https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_sinsa-set.html

多くの場合、自分の専門と合う書面審査区分が2,3個は見つかるため、

どこに申請するかは迷うことになります。

 

申請する際の審査区分は大切

申請書が良ければどの区分に出しても採用されると思っている、そこのあなた…

「違うな、間違っているぞ!(C.V. 福山潤)」

どの審査区分に出すかは申請書の内容と同じくらい大切です。

まずはその理由について解説していきたいと思います。

 

理由①:審査区分が変われば審査員となる先生の専門も変わる。

日本学術振興会曰く、各審査区分ごとに割り当てられる審査員の先生は

その区分の研究内容に詳しい先生が選ばれているそうです。

すなわち、申請する審査区分を間違えると、自分の研究内容に詳しくない先生に審査されることになります。

この”審査員と自分の研究内容のミスマッチ”により起こりうる弊害としては

  1. 研究内容に関わる専門用語が理解できない
  2. 研究の背景をよく知らないから研究の意義が理解できない
  3. そもそも申請書を読みたいと思えない

などが挙げられます。

ある程度のミスマッチであれば、専門用語や研究背景を丁寧に説明することで

レスキューできるかもしれませんが、

完全なミスマッチの場合、その時点で審査対象外になりかねません。

 

では、どのように審査区分を選ぶのが良いでしょうか。

個人的にオススメしたいのが...

学振のHPにある”過去の採用者一覧”を使う

https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_saiyoichiran.html

 

この一覧表で自分の研究内容に関連するキーワードを検索して、

自分と近しい研究内容がどの審査区分で採用されているか徹底的に調べ上げてください。

そうすることで、少なくとも、

自分の研究内容に理解のある先生が審査員がいる可能性が高い審査区分を見つけることができます。

 

理由②:審査区分が変われば、競争相手となる他の申請者も変わる

上記で述べたとおり、学振の評価は”相対評価”です。

競争相手の評価点が低ければ自分の評価点は相対的に高くなります。

では、競争相手の情報をどのように調べることができるのでしょうか。

 

 ここでも重要になるのが

学振のHPにある”過去の採用者一覧”です。

https://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_saiyoichiran.html

自分が申請しようとしている区分において過去の採用者がどれくらいの業績で採用されているかをPubmedで検索してください。

大変ありがたいことに、採用者一覧には採用者の名前と指導教官の名前がセットで記載されているため、採用者の業績は簡単に調べられます。

研究分野によっては主著0報でも採用されやすい審査区分もあるので是非探してみてください。

(ただし、あくまで自分の研究内容と近しい範囲の審査区分で探してください。)

 

最後に

学振の申請書は”申請者の研究分野にはそこまで詳しくない審査員”に読んでもらうものと考えるべきです。

申請書を指導教官に読んでもらうことはもちろん大切ですが、

専門的になりすぎた申請書は外部の先生には理解できないかもしれません。

逆に、「親に読んでもらう」という話もよく聞きますが、

審査員の先生は”生物学のプロ”なので普通のお父さんお母さんとはレベルが違います。

忙しい審査員の先生に読んでいただくという気持ちを大切にした上で、

審査員の先生への配慮が行き届いた申請書にすることが大事かと思います。